お寺の日々 2025.09.06
9月の伝道掲示板

「咲いた花を喜ぶ人は多いが、咲かせた根を労う人はない」川村妙慶
花は、美しく咲いた瞬間に人の目を惹きます。
けれども、その花を咲かせるために、土の中で根は黙々と水や養分を吸い上げ、支え続けてきました。普段は誰の目にも留まらないそのはたらきがあってこそ、花は咲いています。
人の世も同じではないでしょうか。輝く成果や目立つ存在の背後には、見えない、気づかれない努力や支えが必ずあるはずです。
自分自身においても同じで、「私が一人で生きている」のではありません。
ご先祖さま、仏さま、家族、友人、社会、自然――
数え切れないご縁に支えられて「いま」の私があります。
法語はそのことに気づかせてくれます。
現代社会はどうしても「成果」や「見えるもの」に目が行きがちですが、見えないところで支え続けてくれている「根」に心を寄せ、「おかげさま」と感謝することができるのではないでしょうか。そうすれば、人と人との関わりはもっとあたたかく、やさしいものになるように思います。
ほとけさまのあり様も然り。見えないところで「我に任せよ!」とお念佛を通して、わたしたち一人ひとりに喚び続けてくださっていることに気づかせてくださる言葉です。
見える花だけでなく、見えない根を想う心を忘れずにいたいものですね。